書評「あなたはなぜ値札にダマされるのか?」不合理な意思決定を下す7つの法則について解説

こんにちは、白衣です。
今日は久々に書評について書いていこうと思います。

今日ご紹介する書籍は「あなたはなぜ値札にダマされるのか? 不合理な意思決定にひそむスウェイの法則」(オリ・ブラフマン/ロム・ブラフマン 共著)です。

 

 

タイトルは「なぜ値札に騙されるのか」と書いてありますが、買い物するときの心理状態についての考察ではなく、なぜ人々は往々にして不合理な決断を下すのか」というテーマについて様々な研究事例のもとに解き明かしていったものです。

数十年にわたる研究の結果として、不合理な意思決定には以下の7つのような心理学的法則があることを著者らは明らかにしています。

1.損失回避の法則
2.コミットメントの法則
3.価値基準の法則
4.評価バイアスの法則
5.プロセスの公平性の法則
6.金銭的インセンティブの法則
7.グループ力学の法則

それでは、それぞれについて解説していきたいと思います。

損失回避の法則

損失回避の法則とは「人には損失の可能性を何としても避けようとする傾向があり、損失のリスクを避けられるなら、多少の犠牲を払うことを厭わない」というものです。

この法則については皆さんすでにご存知かもしれませんが、「道端で5,000円落とした時のショックの度合いは、道端で5,000円を拾った時の喜びの度合いと同様では無い。 5,000円落とした時のショックを埋めようとするならば、道端で25,000を拾わなくてはならない」という法則です。

伝統的な経済学の理論では価格の変動に対する人々の反応は、価格が上がったときと下がったときでは同様であるとされます。

しかしながら、人間の心理を加味した行動経済学では、我々は何かを得る喜びよりも何かを失う痛みの方が2.5倍強く感じるのです。

コミットメントの法則

コミットメントの法則とは「ある物事に、時間や労力やお金をかけた後では、それが上手くいかないとわかっても、止めることができない」というものです。

この法則も皆さんにとって共感できるものではないでしょうか。

例えば、あるプロジェクトに時間や資金を費やしていると、上手くいかないとわかった後でもそのプロジェクト捨てることができない、というものです。

これ以上進めても泥沼だと分かっていても、そこで損切りすることは中々難しいですよね。

白衣は出版社にて編集職として勤務していたことがありますが、まさに「うまくいかないとわかっていても止めることができない」状況下にある出版社を山のように見てきました。

このコミットメントの法則から逃れる方法は「過去を捨てる」方法を学ぶことである、と著者らは述べています。

過去の体験(特に成功体験)にとらわれず、今この瞬間から未来に向かって状況はどのように推移するのかを冷静に判断し、損切りをするのかどうかを見極めることが重要です。

価値基準の法則

価値基準の法則とは「人は新しいものに遭遇した時、客観的なデータではなく、第一印象を基準にしてその価値を判断しがちである」というものです。

本書ではバイオリニストの例が挙げられています。

世界でも指折りのバイオリニストがワシントンDCの地下鉄の駅でジーンズに野球帽姿で現れ350万ドルのストラディヴァリウスで演奏をはじめました。

しかしながら彼の演奏に耳を傾けた方はほんの一握りだったそうです。

すなわち人々はバイオリニストの演奏や楽器の持つ力については判断をせず、地下鉄、ジーンズ、野球帽といった見た目で演奏の質を判断したということです。

この価値基準の法則に対処する方法は、物事の表層を見るのではなく本質を注意深く観察することであると、著者らは述べています。

評価バイアスの法則

評価バイアスの法則とは「ひとたびある物事に評価を下すと、それに反する証拠が見えなくなる」というものです。

簡単に述べると、「あの人はできる人だ」という判断が一度くだされると、その人がミスをしても「今日は体調が悪いのかな」とか「あのヒトではなくアノ人の周りの人間が悪い」というように、「できる人」という判断が棄却されにくくなるということです。

この法則は恐ろしく、ポジティブに判断されると利益が大きいですが、「仕事ができない」など一度ネガティブに判断されると、多少の成功では周りの目は全く変わらないことを示唆しています。

また評価バイアスの法則と「3.価値基準の法則」が混ざると最後、最初の印象でラベル化された判断が見直されなくなる危険性もはらんでいます。

イメージとしては、東大卒の新入社員が最初のプロ食とでそこそこ良い成績をあげると、その後ちょっとやそっとのミスでは全く評価が下がらない、というものです。

この評価バイアスに陥らないためには、評価は常に暫定的なものとして判断し、結論出す前にじっくりととなる角度から考えることが重要であると著者らは述べています。

プロセスの公平性の法則

プロセスの公平性の法則とは「結果の損得よりも公平性を重視する。その不合理なまでの公平性の感覚が意思決定に強く影響する」というものです。

これは以下のような実験から明らかになりました。
・2人組で全く同じ仕事を全く同じ時間だけする
・報酬金額の取り分比率は片方の人のみが自由に決定できる
・報酬金額を受け取る側は(比率を決定できない人)は受け取るor受け取らない、という選択ができる

この実験を行うと、大多数の人間が報酬金額を50パーセントずつ分けました。

そして面白いことに、金額を設定できる人間が自分の取り分を多くしようとしたとき、受け取る側の人間のほぼ全てが報酬の受け取りを断ったのです。

合理的な観点から言えば、受け取る側の人間は1円でもいいから受け取った方が得なので、受け取りを選択した方が良いはずです。

にもかかわらず、大多数の人間が不公平な分け前の受け取りを拒否しました。

この我々の不合理なまでの公平性に対する信念は、合理的な意思決定を曇らせることが本実験から示されました。

金銭的インセンティブの法則

金銭的インセンティブの法則とは「報酬の可能性をちらつかされると、かえってモチベーションが下がる場合がある」というものです。

本書ではスイスで起きた原子力発電所で発生する放射性廃棄物の危機受け候補地として選択された住民の反応を紹介しています。

身近に放射性廃棄物の貯蔵施設ができることに住民たちは不安を覚えましたが、社会的義務感から約50%が施設の設置に同意を示しました。

そして反対した残り50%を説得するために、政府は「廃棄施設の受け入れを承諾させてくれた場合、町民一人当たり約40万円を支払うことする」と表明しました。

すると興味深いことに、設置案の受け入れを承諾してくれる住民の割合が増えなかったどころか、さらに半分に下がってしまったのです。

純粋な経済学の観点からすれば、保証金を支払えば設置を承諾してくれる住民が増える、保証金の額が増えれば増えるほどその住民の割合も増えていく、というものでしたが、このスイスの例では経済学の論理と矛盾しています。

チクセントミハイ氏が提唱する「フロー」でも類似したことが述べられており、寝食を忘れて仕事(物事)に没入するための条件として、「やりがい」などはポジティブ因子として働くが、「一定以上の給与の上昇」は逆にネガティブ因子として働く、とされています。

「お金がもらえる」という事象は、「公益性のために自己を犠牲にする」「やりがいを感じているから仕事をする」といった心の動きに水を差すようです。

グループ力学の法則

グループ力学の法則とは「グループの中で人々の合理的な思考は歪められ、間違いだとわかっていながらも、大多数の意見に従うことがある」と紹介されています。

これは皆さん絶対に経験あるのではないでしょうか? 

空気を読む日本人ならば1度経験あると思いますが「絶対に間違っているとわかっていても、周囲の人が誤ったことを述べていると、自分も周囲と同じように誤ったことを応えてしまう」というものです。

小学生の頃の給食で、自分は美味しいと思って食べているおかずが周りの友達全員によって不味いと言われてしまうと、「美味しい」と言えなくなってしまう空気感に似ていると思います。ん

このグループ力学の法則には続きがあり、誰か1人でも大多数の意見に迎合しない意見を発する人がいれば、個人を集団に合わせる傾向が著しく下がるということも明らかにしています。

この法則からは
「グループという枠組みの中で、思考は歪められ、正しい意見でも全体の意見と違うというだけで発言しにくくなってしまること」
「一方、たった1 人が異議を唱えるだけでも、この不合理な力を打ち破ることはできるのこと」
をそれぞれ示しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
全ての法則に対して思い当たるところがあるのではないでしょうか?
実際に本書のように言語化されるとメタ認知が可能となりますので、いざそのような場面に自分が陥った時対処できる確率が上がるかと思います。

興味がある方はぜひご一読ください。

それではこの辺で。

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